アブハジアは安全か
セルゲイソ連スキーです。
未承認国家や怪しい地域に行くのが趣味の方にとってアブハジアは魅力的です。しかし渡航前に安全かどうかが気になります。せっかく旅行に行って写真を撮ってもカメラごと持っていかれたら元も子もありません。治安、貨幣、クレカが使えるか、旅行に必要な情報をパパっと解説します。
読むのが面倒な人のために最初に記します。
- 治安:怖くない(ジョージアとの国境付近は不明)
- 通貨:ロシアルーブル
- クレジット:使えます
細かく解説していきます。2019年10月の渡航の情報です。私の滞在日数は9日間です。あくまで私の体験で、スフミより東は行っていません。
政府の見解
日本国政府の見解によると「アブハジア自治共和国は渡航危険3 渡航は止めてください。」となっています。
とのことでレベル4からは引き下げられています(文脈からは時期は不明)。
英国政府の見解によるとAgainst all travel で赤になっています。
Georgia travel advice – GOV.UK
ここまで脅されると流石に行く気が失せるような気もしますが、実際にはどうなのでしょう。
行ってみた
スフミのバザール。大勢の商売人と大勢の市民がやってきます。アブハジアではまだスーパーのチェーン店はメジャーな買い物手段にはなっていません。
アブハジアのソ連団地の廃墟
砲撃された痕跡、虚無みたいな等間隔の窓、ゴミを庭で焼き背後には黒い煙 pic.twitter.com/8W2kD91wVB— 石器時代 (@NsaYamamoto) November 1, 2019
町並みは中心地のストリートはそこそこ綺麗ですが、住宅街はボロいところもあります。20年前まで紛争があったので仕方ありません。共産住宅の一部は砲撃されたあとがあります。これは団地の中でも奥の方の人気がない建物で、大通りに近い共産住宅は普通に人は住んでます。
アブハジアは温暖な気候で、10月下旬でも海水浴を楽しむ市民が浜辺で寝っ転がったり、泳いだりしています。
警官が少ない
私はロシアを旅行した後アブハジアに入ったのですが、首都スフミでも警官が全然いません。中心部の旧政府庁舎の前は、警官が大勢いそうな場所です。しかし女性警官がひとりだけ。ペアですらありません。その警官は私服の男とくっちゃべりながら旧庁舎前にある公園を散歩しています。ほんと警備する気あるのか。
そもそもジョージアとは停戦している
「1994年5月15日、停戦合意が成立し、国際連合の平和維持軍が停戦の監視に当たっている。以後、戦闘は起こっていないが、その代わり、繰り返し行われている交渉による事態の大きな進展もない。グルジアの難民問題は深刻である」 –wikipedia
1989年開始したアブハジア紛争は1992年に大規模な戦闘が起きました。そして1994年に停戦。以後特に何も起きていません。25年も停戦しています。
停戦してるわけですから街にいきなり戦車や軍隊が歩いてくるわけがありません。
そして最もアブハジアの治安が良いことを証明するのはこれ。鍵をかけない国民。
アブハジアは鍵をかけない
家やホステルを囲む柵の門に鍵をかけない。まじです。
本当に驚いたのですが、ガグラ、スフミ、ノヴィアフォンのホステルに滞在しました。全て民泊のような家でした。3件とも家の門の鍵をかけません。日中はもちろん、夜中もかけている様子がありません。
例えばロシアでは必ず厳重に鍵をするのが当然なので、アブハジアでこれを見たときは相当驚きました。宿泊したホステルがたまたまそうだった可能性もあります。しかし首都スフミの住宅街で、日が暮れたあと一般の民家ですら開錠するしぐさ無しに住人が家に入っていくのを見ました。
アブハジアはこれが一般的なのかもしれません。アブハジアの人口はたった24万人。都市化が進んでおらず大体知り合いしか周りに住んでない、田舎的な状態が保たれているのでしょう。
家の門に鍵をかけない国が治安が悪いわけがない。
アブハジアは安全である
アブハジアくんだりまで行くような旅行者にとってはイージーモードだと思います。はっきり言ってアブハジア自体がコーカサスの田舎です。
私は国民感情まで透視することはできないのですが、ジョージアから迫害された歴史もあるアブハジア人は独立出来て満足しているはずです。
また、観光客はそう多くは無いので、ローマやパリのように観光客を狙い撃ちした犯罪や、スリのようなものも無いと思われます。
途上国らしい場面
ただし途上国らしい場面もあります。
アブハジアの一人当たりのGDPは124000ルーブル、円換算で年収20万円 でやはり途上国であることは否定できません。
道端で暇そうにだべってる人と少し話すと、分かれるときにマネーマネー(デンギデンギ)と言ってきます。ただ彼らも本気ではない場合がほとんどらしく、呆れた顔をして無言で立去れば大丈夫でした。
個々人の感覚にもよると思いますがマネーマネー来る程度でも治安が悪いと思う人にとっては「治安は悪い」ということになります。ただ、アブハジアくんだりまで来るようなタイプの旅行者の閾値ではないはず(じゃね?)なのでまず問題にならないでしょう。無視や無視。
夜は寝た方が良い。
夜に出歩いても犯罪に会いやすいという雰囲気は特に感じませんでしたが、どちらかというとそもそも夜は出歩かないものという感じでした。
というのも、街灯はありますが住宅街になると電灯の間隔は減ります。それなりに暗いです。やはり暗がりは怖いものです。
中心のバザールは、4時頃にはもう商売人は撤退しつつあり、5時にはもうサークルが撤退した後のビックサイトを思わせる空洞ぶりを見せます。あんなに昼間沢山いた人々が嘘のように消え去り、市場は静かな空間です。
夜で歩く人々は基本余りいないようで、アブハジア時間ではもう帰って寝る時間のようです。首都のスフミの最も中心の道路でさえ静かな雰囲気があります。
その他
治安以外について記します。
物価
バスでガグラからスフミの83kmを乗車して200ルーブル。日本で言えば東京から石岡が82kmくらいなので交通費は安いです。食費は思ったよりは安くはありません。ハンバーガーを50円くらいで売ってたりもしますが。ちょっとおしゃれな首都のファーストフード屋ではバーガーと飲み物、小さいフライを足すと普通に200RUR以上取られます。
平均年収20万にしては高い印象があります。これは推測なのですが、食料を全てスーパーマーケットで調達するわけではないのだと思います。鶏を庭で飼育するのは当たり前。そこらじゅうコケコッコーですし、牛が道路を闊歩してその辺の雑草を食べています。なんだか自前の食品で食べてそうです。それにレノック(市場)では多くの市民が商売にいそしんでいますが、申告してるのかもわかりませんし。
いずれにしても旅行者は鶏を飼育するわけではないので、中国や東南アジアのような物価爆安を期待することは出来ません。でもロシアよりは安いです。後述しますが宿泊は安いです。
言語
アブハズ語とロシア語となっていますが実質、ロシア語がメインです。
店の看板も室内の表記もほぼロシア語です。
通貨
ロシアルーブルです。
唯一記念通貨があるらしいですが、一度も見ませんでした。観光地に近い銀行では出せるらしいです..ポスターがありました。私は証拠が残ると困るので独自通貨はなしでした。
クレジットカードでキャッシングしたくない人は、スフミにある銀行でユーロかドルを変換できます。レートは割と良い印象でした(公式レート比2%以内くらい)
クレジットカード
店で使えます。Visa, Master card なら間違いないでしょう。
使ってみたところ請求国はロシアになっていました。ロシアのシステムを間借りしていると思われます。
ブッキングコム
Booking comで宿泊場所はかんたんに検索できます。
アブハジアでは宿泊に関する法が細かくないらしくパスポートチェックがありませんでした。私の場合はもちろんすべて安宿の場合です。
1000円以下(350から500ルーブル)で個室に泊まれます。コスパは最高です。
携帯について、私はロシアでMTCをいつも利用していますが、ローミングすると高いのでやめました。アブハジアでSIM買ってみればよかったんですが9日しか滞在しないので購入しませんでした。今考えれば試しにやってみればよかったです。
おわりに
日本に居ると渡航危険レベル3。オレンジの国というと怖いイメージがありますが実際行ってみるとあまり関係ないですね。
- 戦闘は終わっている。
- にぎやかな市場。
- 家の門に鍵をかけない。
- 首都で警官がペアですらなく歩いている。
- 海岸ではのんびり海水浴している。
- 夜は寝ましょう。
温暖な気候です。フランスのニースを、街をボロくてGDPを減らしたらこんな感じになるみたいな場所です。
バザールをてくてく歩いていると何回か写真を撮らせてくれたりします。文明が発達するとか観光化が進んでいくと写真を嫌う人が増えてくるんですが、アブハジアはまだ温厚な感じがします。もちろんたまに変な奴もいますがそんなもんです。
アブハジアの雰囲気は良いですし滞在は割と安く、1日千から1500円くらいあれば余裕で暮らせるので私としてはおすすめの渡航先です。